雪掻き

 雪は煩悩のように積もる。僕の住む地域は雪国で、冬の朝は雪掻きをするのが常である。雪掻きは骨が折れる作業だと思われがちだが、僕は――自分でも意外だが――雪掻きが好きである。冬の早朝ほど清らかなことがあるだろうか。冷たく、清らかな空気と、辺り一面雪の真白な景色と、未だ陽の昇らない町の閑静さが、僕の五官をchill outしてくれる。

 煩悩を払うように、髭を剃るように丁寧に、雪を払っていく。払い終わった頃には夜が明け、だんだんと明るくなってくる。僕が顕著に冬の季節を感じるときである。モームが髭剃りにも哲学があるといったように、雪掻きにも哲学があり、フローがあり、禅の境地があるのかもしれない。