2021年2月

冬は山を超えたかなと思う。ブラームス交響曲第1番で例えるなら第3楽章あたりだろう。ブラームスの曲はどれも硬質、繊細かつ質実剛健である。ベートーベンがBMWだとすればブラームスメルセデス・ベンツといったところか。まあ僕は車にあまり詳しくないし外観の印象のみの判断なのであるが。ところで、僕が使ってる唯一のドイツ製品はMühle社製の両刃カミソリである。これもまたブラームスのような飾らない、質実剛健な品である。まあ肝心の刃はフェザー社製(日本製)の「ハイ・ステンレス」なんだけども。

W・S・モームは「髭剃りにも哲学がある」と言ったが、全くその通りで、髭の剃り方にその男の気質と性格が出ると思う。もしその男がどういう人間かを見たければ、髭剃りの様子なりやり方なりを見てみるといい。

M・チクセントミハイ著『フロー体験:喜びの現象学』を近頃は読んでいるが、心理学書というよりかチクセントミハイによる思想書といった方が適当かなと思う。第4章のフロー理論の箇所は科学書の趣だが、以後は思想書であるといっても差し支えなかろう。彼の真摯な文体は、やや退屈でもあり、面白くもある。しかし僕としてはフローより不労所得を得て、生きてみたいものだが。