哲学って何?

哲学者、哲学研究者、そして哲学を熱心に学ぶ学生などを困らせる質問があります。それは「哲学って何?」という意外なほどシンプルな質問です。というのも、哲学というのはかなり多義的な概念であり、そのため人によって解釈がかなり異なるからです。たとえば、「りんごって何?」という質問にたいして「赤くて丸いものだよ」とか「旧約聖書に書かれている通り、アダムとエヴァがそれを食べてしまって、原罪を背負う羽目になったものだよ」とか「りんごっていうのは実は存在しなくて、人間の知覚の集合にすぎないんだよ」とか色々定義できてしまうのです。哲学も同様です。

なので、ここでは僕なりの哲学の定義みたいなのを示したいと思います。緻密にやろうとすると骨が折れるのでここでは簡潔に示したいと思います。僕は哲学を「既知の事物に関する探究」であると考えています。具体的な根拠は3つ;

・科学が「未知の事物に関する探究」であるのに対して、哲学とは「既知の事物に関する探究」であること

・哲学とは既知の事物、例えば科学の成果、過去の哲学の概念を用い、わからないことについてある程度整合性がある答えを出すこと

・哲学とは批判の学であり、(特に抽象的な)既知の事物にたいして根本的に思考を巡らせる学であること

この3つが緩やかに三位一体となっているのが今日における哲学なのではないかなあ。わりといい定義だと思うんだけど、どうでしょう?

 

ところで、「既知の事物に関する探究」というのは野家啓一先生の定義を参考にしています。以下に文献を載せておくので興味のある方はご一読を。

増補 科学の解釈学 (ちくま学芸文庫)

増補 科学の解釈学 (ちくま学芸文庫)

 
科学哲学への招待 (ちくま学芸文庫)

科学哲学への招待 (ちくま学芸文庫)